カプセル建築の系譜

1970 大阪万博 住宅カプセル

1970 大阪万博

1970年に開催された日本万国博覧会(大阪万博、EXPO ’70)では、黒川紀章、菊竹清訓、槇文彦といった建築家たちが取り組んだメタボリズム建築による都市の未来像の見本市であった。黒川紀章は3作品を発表した。

タカラ・ビューティリオン

プロデューサーを務めた「タカラ・ビューティリオン」(タカラパビリオン)では、格子状の鋼管にステンレスパネル製のカプセルを構成した。
タカラパビリオン
所在地:大阪府
設計/施工期間:1967–1970年延床面積:2,393m2
構造規模:鉄構造地下1階地上4階

また、「東芝I H I館」ではテトラユニットという三角錐のパーツを大量に組み合わせてドームを内包した。

空中テーマ館住宅カプセル

注目すべきは未来の住宅を表現した「空中テーマ館住宅カプセル」である。お祭り広場に丹下健三研究室が設計した地上30m、108m、長さ291mのトラス構造の大屋根に吊るされ、いわば宇宙ステーションのようであった。車輌工場で生産したカプセルを、設置現場の真下で組み立て、ウィンチを用いてスペースフレームに吊り下げた。

お祭り広場大屋根に吊られたカプセル住宅

来場者は導入路を進み、本来は居間であったテレビタワーのある円形空間や周囲の親子3人のカプセルを見学した。部屋のカプセルにはベッドカプセルと浴室便所カプセルが付属する。

左手にキッチンがついた女性用の部屋カプセル。右奥にベッドカプセルが付属する。

両親のベッドカプセルの脇にはハッチがあり、開けると行き来できる仕様だ。各部屋のカプセルに隣接した浴室便所カプセルには、1964年に菊竹清則が設計したFRPバス・トイレ・ムーブネットがある。東京オリンピックから普及した一体型ユニットバスの一種である。

黒川は以下のように述べている。「空中テーマ館は、社会的耐用年数のヒエラルキー(social-metabolic cycle)を設計に取り入れ、設備ユニット、個室ユニットをプレファブ化の単位としてアッセンブリーした量産住宅のプロトタイプなのである」(『メタボリズムの発想』1972年、白馬出版)住宅内の寝室や居間が物理的に機能する年数と、社会的な耐用年数は異なると考え、黒川はプレファブ住宅を量産する代わりに、プレファブ部屋のカプセルの生産を提案した。例えば子供が成長して15年~20年が経過すると、子供部屋は不要になる。成人した子供は自分のカプセルごと引っ越し、親は代わりに別の用途のカプセルを購入すれば良い。部屋ごとに新陳代謝を行うというメタボリズムの発想だ。

カプセル建築の系譜 1972 中銀カプセルタワービル

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